本レポートは、国内のインターネット広告のプレイヤーがアドベリフィケーションに関してどのような意識を持っているのかを明らかにすることを目的に、日本のアドベリフィケーションベンダーであるMomentum社が電通デジタル社と行った調査をまとめたものです。
モメンタムは、日本語に特化した言語解析技術と独自データを活用したアドフラウド検知技術を基盤に日本のデジタル広告業界の健全化への取り組みを牽引するアドベリフィケーションソリューションカンパニーです。国内の広告代理店、広告プラットフォームにおいて幅広く弊社ソリューションを活用頂いており、代理店向けのAgency Certification Program(ACP)、広告プラットフォーム向けのPlatform Certification Program(PCP)という認定制度にも数多くの日本を代表する企業様に加盟頂いております。「無価値な広告をゼロにする」という弊社のミッションの実現を通して健全なデジタル広告市場の発展に貢献します。全方位型で精度の高いアドベリフィケーションソリューションの開発・提供を行っています。
調査名称
:アドベリフィケーション意識調査2021
調査期間
:2021年6月8日〜6月11日
有効回答数
:アドバタイザー 412件
:エージェンシー 358件
:プラットフォーマー 198件
対象
:国内のアドバタイザー、エージェンシー、プラットフォーマーで、広告 関連事業に携わっている方
調査機関
:マクロミル株式会社
備考
:本レポートでの売上規模の定義は全て下記の通り
小:年商50億円未満
中:年商50億円以上〜200億円未満
大:年商200億円以上
アドベリフィケーションに関わるキーワードの認知率はプラットフォーマーが最も高く、アドバタイザーと比較して2倍以上の開きがあった。また、「知っている」と回答した層の中でも、約3〜6割は「名称は知っているが内容は知らない」という回答だった。エージェンシーに関しては、売上規模の大きさと認知率が比例して高くなるという結果になった。
アドベリフィケーションの対策実施率に関しても認知率と相関関係を示した。対策のきっかけとしてはアドバタイザーは「大手企業の導入事例を見て」が最も多かった。エージェンシーとプラットフォーマーは「アドフラウドやブランド毀損が問題になっているから」が対策実施のきっかけの上位を占めた。
対策しない理由としては、アドバタイザーとエージェンシー共に「今回の調査までこのキーワードを知らなかったから」がもっとも多かった。プラットフォーマーのみ「対策方法がわからないから」が上位を占めた。
対策の効果としては、「ブランド毀損にあたる広告を防ぐことができている」をはじめ、アドベリフィケーション施策としての効果を実感している回答が多かったが、一部「とくに効果は出ていない」という回答もあった。プラットフォーマーに関しては、「CPCが改善した」のような顧客獲得効率が改善したという回答も上位を占めた。
アドバタイザーは全ての領域において、自分たちが負担すべきと考えている回答が多かった。逆に、エージェンシーとプラットフォーマーは、全ての領域で自分たち以外が負担すべきと考えている回答が多かった。
今回の調査から、アドバタイザーに関して、Momentumが前回まで調査対象としていた「上場企業」という枠を外し、非上場の企業も対象に含めた。そのためか、エージェンシーやプラットフォーマーと比較すると認知率の低さが浮き彫りになった。また、アドバタイザーは「名称は知っているが内容は知らない」という回答が「知っている」と回答したうちの50%以上を占め、エージェンシーやプラットフォーマーに関しても30%以上を占めた。この層へのさらなる啓蒙活動を行いつつ、「名称も内容も知らない」という層への認知を広めていくことが今後も必要になってくると思われる。
インターネット広告の健全化を実現するためには、施策実施率を伸ばし、国内のデファクトスタンダードにしていくことが鍵となる。アドベリフィケーション施策実施のきっかけを見ていくと、「大手企業の導入事例を見て」という回答が多かった。また、対策実施の効果としても、ポジティブな回答が目立った。特に、プラットフォーマー側からは、CPA,CPC,ROASなどの広告パフォーマンスが改善したという回答が多く、リスク対策に限らない効果が発揮できていた。つまり、すでに対策を行っている企業に関しては、効果検証を行ったうえで、どのような結果が得られたかを含め、自社の事例をどんどん公開していくことが肝要である。アドベリフィケーション推進協議会としても事例などを作成し公開していきたい。
日本国内においてアドベリフィケーションのの施策が浸透しない理由として考えられているコスト問題について、「アドベリフィケーションのコストは誰が負担すべきだと思いますか?」というアンケートを行い、各サプライチェーンがどう考えているのかを明らかにしたいと考えた。結果としては、回答者ごとに負担者として想起される者は異なり、その認識を合わせていくのにはまだま時間がかかるのではないかと思われる。また、アドベリフィケーション推進協議会としても、「コスト」ではなく費用対効果が見合った 「投資」であるという事例や調査を公開していきたい。
あなたは、デジタル広告配信における「アドベリフィケーション」や、「ブランドセーフティ」「アドフラウド」「ビューアビリティ」といったキーワードをご存知ですか。ご自身に最も近いものをそれぞれお選びください。
アドバタイザー、エージェンシー、プラットフォーマーで比較すると、全てのキーワードにおいて最も認知率が高いのはプラットフォーマーで、次いでエージェンシー、アドバタイザーが最もキーワード認知率が低い結果となった。
なお、「名称としては知っているが内容は知らない」、という回答も一定数存在し、最も顕著なケース(アドバタイザーのアドフラウド認知率)では、名称を知っていると回答した31.8%のうち、約6割となる18.9%が、内容は知らないと回答している。
自社のデジタル広告配信の対策としてそれぞれあてはまるものをお答えください。(回答はそれぞれ1つ)
回答選択肢
・対策をとっている。またはとったことがあり、今後も対策をとっていきたい
・対策をとっている。またはとったことがあるが、今後も対策をとりたいと思わない
・対策をとっていないが、今後対策をとっていきたい
・対策をとっていないし、今後も対策をとりたいと思わない
・対策をとっているかどうか、わからない
プラットフォーマーは対策実施率が50%を超えており、最もアドベリフィケーションが定着しているプレイヤーといえる。
アドバタイザーにおける対策実施率は相対的に低く、30%未満にとどまりました。
ただし、アドバタイザーでは、約3割が「対策をとっていないが、今後対策をとっていきたい」と回答し、対策実施に向けて前向きであることがわかる。
エージェンシーでは、「対策をとっているかどうかわからない」という回答の割合が他のプレイヤーに比べて高い。これは、エージェンシーによっては、アドベリフィケーション対策実施の有無を案件毎に判断することがある、というのが一つの要因ではないか。
「対策をとっている(とったことがある)」 と答えた方にお聞きします。アドベリフィケーションに取り組んだきっかけはどのようなものでしたか。※複数回答
概ね共通のきっかけが見受けられるが、エージェンシーのみ「取引上で対策をとる必要が生じた」というきっかけが上位にランクインしている点は興味深い。
「対策をとっている(とったことがある)」と答えた方にお聞きします。
下記に該当するアドベリフィケーション(ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティなど)に取り組まれた結果、現時点でどのような効果が出ていますか。(いくつでも)
プラットフォーマーはすべてポジティブな効果を実感している。
一方、アドバタイザー/エージェンシーはいずれの項目にも「とくに効果は出ていない」がランクインしており、アドベリフィケーションの効果が実感できていない印象。この点、実施後の効果測定と結果の正しい理解のために、各プレイヤーの合理的な協力が求められる。
アドベリフィケーション(ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティなど)に取り組む際、コストの負担は誰がすべきだと思いますか。それぞれあてはまるものをすべてお選びください。
アドバタイザーへの質問では、自ら(アドバタイザー)が負担すべきという回答に最も多く票が集まった。
エージェンシーも同様に、アドバタイザーが負担すべきという回答が最も多い結果に。
プラットフォーマーは、上記と異なり、エージェンシーが負担すべきという回答が最も多かった。
比較的少数ではあるが、パブリッシャーやアドベリフィケーションベンダーが負担すべきという回答も見受けられた。
回答者ごとに負担者として想起される者は異なり、その認識を合わせていくのにはまだま時間がかかるのではないか。
2021年4月にJICDAQの事業が開始され、賛同するアドバタイザーのリストが公開されるなど、インターネット広告のリスクに対する業界的な動きが具体的かつ活発になってきました。
Momentumはこのような動きがどの様に世の中で認識され、存在しているのかを明らかにするため、本調査を定点観測的に行っています。今回の調査では、認知率・対策実施率に加えて、アドベリフィケーション施策実施後の効果や、施策の浸透が進まない原因であると考えられる「コストを誰が負担するのか」について、まず問題の輪郭をくっきりさせるべく横断的に調査を行いました。
この調査が、すべてのインターネット広告業界を健全にしようとしている企業・個人の活動に寄与すれば幸いです。